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故林俊博先生への弔辞

  • 松嶋範男
  • 2018/06/12 (Tue) 20:17:14
今年は登別高校の恩師林俊博先生の7回忌を迎えます。私は先生の葬儀で弔辞を読む機会を与えられました。このことは私に人生にとって忘れられない名誉なことで、内心とても誇りに思っています。その弔辞で教え子の一人が読んだ短歌を紹介しました。最近、その人の住所が偶然わかり弔辞の原稿を送りました。皆様にも、林先生の冥福を祈っていただきたく、ここに紹介したいと考えました。

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弔 辞

僭越ながら、教え子を代表して、弔辞を読ませていただきます。私は、林先生が登別高校の国語の教員として勤務されていた時の教え子です。先生は、昭和三十九年度入学生の四クラスのうち、C組のクラス担任をされていました。先生は、私の二、三年のクラス担任となりました。それ以来、四十五年以上にもわたり、先生と親しく交際させていただきました。その間、先生がくださったさまざまな温かい示唆やサポートは、どれほど、私を励まし勇気づけてくれたか、計り知れません。

先生との思い出をご紹介し、先生の温かい人柄、また、先生が如何に教育者として優れていたかをお話ししたいと思います。

当時、先生は三十代の若々しい青年教師でした。先生は、高校生の時から俳句や短歌に興味をもたれ、大学では、演劇集団、天井桟敷の主催者、故寺山修二らとともに、俳句の全国大会も開催されたとのことです。そんな、ロマンチストの先生ですから、国語の授業や学級会の折々に、文学や俳句などのお話しされました。私にとっては、全く異質の世界のことで、そのような世界があるとは、全く驚いてしまいました。お恥ずかしいのですが、それまで、夏目漱石とか福沢諭吉の伝記ものを読むぐらいで、小説などの文学書を、ほとんど読んだことがありませんでした。先生の文学についてのおもしろそうなお話しから、初めて、図書館に足を運び、一冊借りました。それは、ドイツの文豪、ゲーテの、“若きウエテルの悩み”という恋愛小説でした。それから、しばしば、図書館を訪ね、国木田独歩や志賀直哉などの小説を読み始めました。また、卒業の折には、われわれ一人ひとりに、文庫本を、卒業記念としてプレゼントしてくれました。私は、大岡昇平作の戦争文学である“野火”をいただきました。

高校時代、私は、数学、物理学、化学などのいわゆる理科系の科目に染まっていました。それから四十年以上にわたり、生命科学、ライフサイエンスの研究を続けています。いつも、実験や観測結果の分析や解析、頭の痛くなる論理を使いこなさなければなりません。ところが、文学書や歴史書などに、ひと時、夢中になることにより、私の脳みそは、解きほぐされ、柔らかくなります。また、うまく説明はできないのですが、自然科学以外の知識やものの見方が、研究上のアイデアを生み出す源の一つと思っています。先生は、その決定的な動機、刺激、切っ掛けを与えてくれました。

高校二年生になってから、何とか大学に進学したいと思うようになりました。しかしながら、当時、私の家は、豊かではなくむしろ貧しい家庭でした。そんな様子をみて、先生は、古語辞典を、そっと、私に渡してくれました。また、進学するには国語の成績は、よくありませんでした。それで、とにかく、読書をしょうと決心しました。次に、先生に文章の添削をお願いしました。それは、朝日新聞の天声人語欄の内容を短くまとめることでした。毎日、三か月くらい行っていただきました。それで、やっと、読み書きを人並みにできるようになったわけですが、このような先生の好意が、どれほど大変なことか、わたしは、同じ教員をしていてわかります。先生は、われわれ生徒に、何かを強制するとか、勉強しなさいとかは、決していいませんでした。わたしの様子をみて、逆に、すこし、遊びなさいというのです。また、結婚してから、 “間これ宝なり”という先生の書を、黙って、くださいました。恐らく、私の血の気の多さを戒めるためです。

このような先生の教育的配慮は、決して、私だけへの依怙贔屓ではありません。先生は、生徒一人一人の個性を鋭く観察し、さまざまな温かい手を差し伸べています。先生からお聞きしたことがあるのですが、一人の生徒をある事情で退学させてしまったことがあります。しかしながら、その方は、先生が昨年六月から闘病生活をされたことを知り、次の短歌を読んでおります。紹介させていただきます。

   もの言へず 臥(ふ)していませど 尊(とおと)かり
   林俊博 起(お)きて再(ま)た立て

彼の、先生への強い思いが感じられてなりません。

先生の教育は、生徒を良い方向に指導するという教育ではありません。先生の教育は、生徒一人ひとりに欠点や至らない点を、自ら悟らせる教育だと思います。これは、すぐに効果の表れる教育方法ではありません。

本当に、自由にさせてくれました。ですから、わがC組は、体育祭のクラス対抗試合は、皆一致して協力してやり遂げることができず、負けてばかりいました。合唱コンクールでもピリケツといった状態です。先生は、それをみていつも笑っていました。しかしながら、日曜日、夏休み、冬休みなどには、どれほど多くの生徒が、先生の自宅に遊びに出かけたかわからないと思います。そして、奥様は、いつもニコニコして、おいしい料理でもてなしてくれるのです。私も、大学に進学してから、就職するまでの十数年は、毎年二回ほど、自宅に伺い、先生に勝手気ままに夢やほら話しながら、いつも、奥様の心のこもった料理を、“たらふく”いただいてしまいました。

先生の自らを悟らせる教育は、卒業後に実を結んだと思います。われわれのクラスは、卒業後、とても仲よくなり、三年に一回くらいのペースでクラス会を開催し、今に至っています。先生は、これほど多くのクラス会をやっている教え子は、わがC組だけだとおっしゃっていました。奥様もクラス会に招待したことがありました。そのクラス会でいつも、われわれは、高校時代のやんちゃで、理不尽な振る舞いを、深く素直に反省し、初心に帰り、新しい生きるエネルギーを得ることができました。

汝自身を知れ、これは哲学の始祖、ソクラテスのことばであります。己を知る。これほど難しいことはありません。己を知ることさえできれば、われわれの人生上のほとんどの悩みや問題はなくなります。先生は、教育の根源、この己を知ることの大切さを、身をもって教えたのだと思います。

つい、一週間前、昭和三十九年度入学の二期生同期会を、三十数年ぶりに、札幌で開催することができました。わがC組の佐藤マサヒロ君が、代表幹事をつとめ、四十五名もの参加者を数えました。四次会までも行い、更に、次の日も、会食会を行うほど、大成功でした。参加者の皆さんに、とても感謝されました。マサヒロ君が言うように、先生は、われわれの同期会開催を見届けてから、安心して、あの世に旅立たれたのではないかと思います。

われわれは、先生の慈愛にみちた優しい心を決して忘れません。先生の心からのご冥福をお祈りし、弔辞とさせていただきます。
   
平成二十四年八月四日
登別高校二期生
松嶋範男 
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適塾in登別(6月4日)

  • 松嶋範男
  • 2018/06/04 (Mon) 11:13:13
登別に引っ越してから1か月。その間、重い風邪を患う。疲れが溜まっていたのであろう。病院の薬でやっと回復。卓球サークル“さつき”に入会(週2回)。我が家で学習塾適塾in登別“をはじめ、小学6年生の男子(2人)を週2回教える。卓球サークルのメンバーの一人は亡父の知り合い、塾生の1人は姉の知人のお孫さんである。家族の社会的つながりの遺産は貴重である。

松嶋さんのブログ、楽しみです

  • MMK
  • 2018/05/17 (Thu) 06:59:55
しばらく書き込みがありませんが、お元気ですか?
松嶋さんの博識ぶりにはいつも驚かされてしまいます。
専門分野で業績を残しながら理・化学系だけではなく、
広く文学や歴史にまで造詣が深く及んでいるのは
まったく驚きです。
同じ世代のものとして、「こうしてはいられない」との思いに
駆られます。
私的な書き込みになってしまいましたが、わたくしと
同じ思いをお持ちの方は多いはずと考えて、思い切りました。
ご多忙は承知しておりますが、この掲示板にも時間を
割いていただけると嬉しく思います。宜しくね。

Re: 松嶋さんのブログ、楽しみです

  • 松嶋範男
  • 2018/06/04 (Mon) 11:07:51
ありがとうございます。とても元気づけられます。

「史記の世界」を読む(4月17日)

  • 松嶋範男
  • 2018/04/17 (Tue) 20:44:54
紀元前91年中国漢の時代、司馬遷は歴史書「史記」130巻を世に問うた。歴史の父と呼ばれる古代ギリシア(紀元前400年前)のヘロドトスと並び称されている。貯蔵本を整理していたらほぼ50年ぶりに武田泰淳著の「史記の世界」をみつけた。大学1年か2年生のころこの本を読み、司馬遷の生きざまに感動し励まされた。いまでも“司馬遷は生き恥をさらした男である”とう言葉は覚えている。私のベスト推薦書の1冊である。さっそく再読。

劈頭第1ページに“司馬遷は生き恥をさらした男である。土人として普通に生きながらえる筈のない場合に、この男は生き残った。口惜しい、残念至極、情けなや、進退きわまった、と知りながら、おめおめと生きていた。腐刑といい宮刑という、耳にするだにけがらわしい、性格まで変るとされた刑罰を受けた後、日中夜中身にしみるやるせなさを、噛みしめるようして、生き続けたのである。そしておして執念深く書いていた。”という文章がある。

著者の武田泰淳は「森と湖の祭り」などで知られる小説家である。第二次世界大戦中の昭和17年の言論統制がなされた不自由な時代に、この評論「史記の世界」を発表したのである。

書きたいことがたくさんあるのですがなかなかまとまりません。再読して、ひとつだけ気づきました。やることがなくなると、人は4,5年でお迎えがくることです。

司馬遷は牢獄にある友人任安から、何故生き恥をさらしてまで生き続けるのかという問いに、「史記」完成の紀元前91年「任安に報ずるの書」にその思いを表しています。聞くも涙、語るも涙の名分です。書き残したいものがあるから生きている。やることがあることが、人が生きる上で一番大切で幸せであることを改めて確認。父は畑仕事で毎日暮らしていました。やることがなくなると畑の掃除や他人の家の除雪をしていました。司馬遷は「史記」完成後、4,5年後であの世に行っています。

論文捏造をみつける(4月17日)

  • 松嶋範男
  • 2018/04/17 (Tue) 14:48:30
小保方氏によるSTAP細胞の論文捏造事件がやっと終了した思いきや、捏造と思われる論文を見つけてしまいました。その発見経過を述べたいと思います。

最近、The Protein Journalに“Super Secondary Structure Consisting of a Polyproline II Helix and a -Turn in Leucine Rich Repeats in Bacterial Type III Secretion System Effectors”の論文を発表しました。その論文を発展すべく次の研究を共著者のバトカ君(モンゴル)に提案しました。

そのために蛋白質立体構造データベース(PDB)から新しいデータをダウンロードし、その二次構造解析を詳しく解析しました。その中に、これまでに膨大な実験研究から確かな事実および知見として認知されていたものと明らかに異なる異常な結果があることに気づきました。一見すると、論文の図は他の研究者による他の蛋白質の結果と矛盾していません。実験結果の捏造はPDBの座標ファイルデータに埋め込まれていましたので、これを見破るのはレフェリ-でも難しかったかも知れません。私も第二報目のための研究をして初めて見つけることができました。もし、この異常な結果が真実と信じることができるならばこれだけで論文を書けるはずです。Scienceに発表された論文です。ある国の科学アカデミーに所属する研究者の報告です。すでに、X線結晶構造解析や蛋白質立体構造の専門家は見破っているかも知れません。悪質です。

以前、ある蛋白質のアミノ酸配列を決定した論文のレフェリーをしたことがあります。アフリカで出版されている生化学の専門雑誌でした。蛋白質のアミノ酸配列のデータは雑誌に投稿する前に登録されていなければなりません。その論文にも登録番号が記載されていました。しかしながら、実際に調べてみると登録されていませんでした。その論文の著者は日本の研究機関に所属する研究者でした。日本人研究者ならば、普通そのようなアフリカの専門雑誌に投稿しません。それで、編集者にこの論文は捏造であるので却下するようメールしました。まもなく、その蛋白質のアミノ酸配列の論文が他の研究者により報告されました。

グローバル化時代を迎え、政治、経済の世界は弱肉強食の世界となっています。研究も同様な状況で、金儲けのため雨後の筍のごとく専門雑誌が創刊され、また国際会議が開催されています。まともなimpact factorがある信頼できる生命科学関係の専門雑誌は500ほどです。それ以外の専門雑誌はその数倍あると思われます。

蛋白質データ、文献検索あれこれ(4月4日)

  • 松嶋範男
  • 2018/04/04 (Wed) 20:17:16
相変わらず自己中のお話しです。読者にはいつも感謝しています。ありがとうございます。読者が一人でもいると、とても励みになります。まちがいなく私の脳トレになります。

ロイシンリッチリピート(LRR)の突然変異が、統合失調症、先天性夜盲症、癌などの発症にかかわることが明らかにされている。それらの病気の遺伝子解析、発症機構の解明が進展している。また、薬の開発が強く望まれている。

人の病気の発症に関わるLRRについて、 2005年Cellular and Molecular Life Sciences(CMLS)に、その時までに報告されていた研究論文をすべて収集し、その突然変異が1本の長い紐とみなされる蛋白質のおれたたみ(立体構造)に如何なる影響を与えるかを考察し総説として報告しました。これはCMLSの編集長から依頼されたものです。それはLRRの立体構造を新しい方法により解析した論文(Enkhbayarさんの博士論文の一部)が評価されたものと推測されました。その成果の基づいた総説は、すでに他の雑誌に掲載していました。それで、CMLSにLRR突然変異の総説を提案しましたところ、OKの返事をもらったわけです。この問題に、LRR研究をはじめてから気がつき、暇を見つけは根気よくデータ検索していた成果でした。

その後も気が向いては、文献検索および蛋白質データ検索をしていました。いつかは第2報目をものにしたいと思っていました。ところが、Keynote Speaker として招待されたフロリダの国際会議は、“International Conference on Emerging diseases, outbreaks and Case Studies”です。多分、招待はCMLSの総説のためと思われました。最初は国際会議に参加するつもりで、概要(写真と履歴書も)を送っていましたら削除されずにABSTRACT集に掲載されていたようです。そのABSTRACTを閲覧した、2,3の専門雑誌の編集者から投稿依頼を受けました。多くの研究者が関心を持っていることがわかりました。

そこで、気合をいれ検索をやり直してみました。検索は単純です。Key Wordsを使ってのPubMedやgoogleのサイトによる検索です。あとは文献の読み取りと整理、そして蛋白質アミノ酸配列の解析だけです。論文はしばしば有料(30ドルほど)ですので、北大で働いている教え子に頼むか、著者のE-mailアドレスをさがし直接pdfファイル送ってくれるようにお願いします。文献は200篇を超え、ほとんどpdfファイルとして取り込みました。

突然変異のデータが飛躍的に増大。病気の発症に関わるロイシンリッチリピート蛋白質は18から55個に増えていました。62種類の病気の発症に関わっていました。本当に驚いてしまいました。国際会議の主催者に感謝です。

テレビを鑑賞しながら、癒しの音楽を聴きながら、暇があればコンピュータに向かっていました。一応データを整理しましたのでひと段落しました。データをすべて素原稿とともにKretsinger先生に送りました。先生は、ABSTRACTはExcellentと評価し、本にするのか、あるいはどの雑誌にするのかとのメールをくれました。このようなやり取りがとても生活を充実したものにしてくれます。お互い刺激し合っています。

頭を冷やさなければなりません。引っ越しの期日も決まりました。明日からは休みたい。親しい友人と噂話で過ごし、映画館にもでかけよう。

科学専門雑誌の出版事情(4月1日)

  • 松嶋範男
  • 2018/04/01 (Sun) 09:36:28
2,3日前、インドのカルカッタ大学のある男性研究者から“Admirers of your research”なるメールがとどいた。“Admirer”は初めて目にする単語で、調べてみると賞賛あるいはファンという意味である。私のライフワークであるタンデムリピートの研究に強い関心を持っている。彼の妻も研究者であるので、一緒に日本で博士号を取得したいので私との研究を希望していた。

彼らの論文ファイル(bioRxiv preprint)が添付されていた。それは、私が長年研究し続けているロイシンリッチリピートがあるToll-like receptor (トール様受容体;TLR)の分子進化の研究である。分子進化は蛋白質のアミノ酸配列や遺伝子の核酸塩基配列を比較して進化を明らかにする研究である。彼らが使った方法はこれまでに確立された手法を用いて解析したものである。TLRにはTLR1からTLR11までのファミリーが存在している。20数回繰り返すロイシンリッチリピートを各リピート毎に、分子進化をしらべている。この点が新しいアプローチと思われる。ただし、比べるアミノ酸配列が短いのでその信憑性が疑わしくなる。議論が分かれるであろう。

bioRxiv preprint とは何であろうか。専門雑誌であるのだろうか。ウイイキペデイアに「bioRxiv(バイオアーカイヴ)は2013年11月に開始された生物学のプレプリントリポジトリである。正式な表記はbioRχivで、χはエックスではなくギリシャ文字のχ(カイ)である。コールド・スプリング・ハーバー研究所が運営している。プレプリントであるので、bioRχivが提供する論文は査読されていない。しかし基本的な選別と剽窃の判別は行われている。読者はプレプリント論文にコメントを付けることができる。」と。即時性(査読がないのですぐに)、オープンアクセス(誰でも無料で閲覧)、優先権の確立(誰が最初に思い付いたか)などから利用が増えている。しかしながら、査読がないため論文内容の真偽が保証されない。誤った情報が伝わる恐れが高くなる。論文が撤回される数が毎年増えている。専門誌は査読があるため出版されるまで時間がかかる。今回The Protein Journalに投稿した論文は4カ月余りかかっている。

専門雑誌の論文をオープンアクセスにすると、一般に30万円の投稿料をとられる。The Protein Journalへの論文はUSD2,200請求された。モンゴル大学のエンヘバヤル教授が科研費で支払う。退職した身ではこの投稿料はキツイ。できるだけ安い雑誌を探すことになる。Journal of Proteomics and Bioinformatics (2014) に投稿した論文は、割り引いてくれ15万円ほどで済んだ。しかも、共著者であるKretsinger先生が肩代わりしてくれた(たぶん科研費から)。私のモノグラフである Leucine Rich Repeatの本の出版費は30万円であった。

現在、人の病気にかかわるロイシンリッチリピートの突然変異の研究をまとめている。Biomoleculesという雑誌に投稿するつもりである。これまで2つの総説を載せている。この雑誌は、投稿の際、論文の編集作業も一部するので安い投稿料ですむからである(約8万円)。Biomoleculesは、生命科学関係の文献データベースPubMedに登録されているのでサーキュレーションもよい。しかも、近々インパクトファクターも正式に評価される予定である。もっと評価の高い専門雑誌があるが、Biomoleculesはオープンアクセスジャーナルなので優先権に問題がない。

私の小遣いは雑誌の投稿料に費やされることになります。しかしながら、よい論文をだすと世界中からいろいろな反響があります。カルカッタ大学のある男性研究者からのメールもそのひとつです。以前、この欄にフロリダでの国際会議でKeynote Speaker(基調講演)として招待されたことを述べましたが、その後、あいついでカナダ(トロント)での蛋白質と核酸の国際会議と中国(Sanya)での生化学と分子生物学の国際会議でも招待されました。これらはいずれも学会の参加費や宿泊費(一部)をfreeにするからとのことでした。このようなことがあると古希をむかえる身に元気が湧いてきます。脳みそを付き切り疲れますが、楽しいのです。もはやレジャー、趣味の領域といえるかも知れません。

「サピエンス全史」を読む

  • 松嶋範男
  • 2018/03/30 (Fri) 23:12:17
この宇宙は137億年前に何もない点から急に膨張しはじめ現代に至ったことが、これまでの観測と理論的な研究から明らかになったと多くの人に信じられている。いわゆるビッグバン理論である。ビッグバンは時間や空間はない無の世界からはじまった。

ユヴァル・ノア・ハラリ著の「サピエンス全史」の副題は、文明の構造と人類の幸福である。ハラリ氏は狩猟採集生活時代においてホモサピエンス(現代人)に認知革命がおこり、肉体的には優れていたネアンデルタール人を駆逐してしまった。次の過去1万年ほど前に農業革命がおこり人口が著しく増加した。そのとき多くの人々をつなぎとめるために多くの虚構を生み出した。虚構とは宗教、貨幣、法律、会社のように、共同主観(多くの人々が共有している主観)によってあるものと信じることができるものである。

“共同主観”という言葉から、すぐに学生時代に一世を風靡した吉本隆明の“共同幻想論(1968年)と廣松渉の”世界の共同主観的存在構造“を思い出した。廣松氏は私が尊敬する第一級の独創的な哲学者である。引っ越し準備で書物を整理していると“共同幻想論”を見つけた。でも両著とも読んではいない。こんどゆっくり読んでみたい。

近代は1789年のフランス革命の“自由”、“平等”“博愛”を共同主観として成立している。ハラリは自由を徹底すると平等を実現できない、また、逆に、平等をめざすと自由を許すことが難しくなると。したがって、自由と平等は自己矛盾しているのである。

そして、500年前に科学革命がおこり現代に至っている。先日亡くなった宇宙科学者ホーキング博士は他の惑星への移住を真剣に提案していた。彼はこのままでは地球は人を含めた多くの生物が絶滅してしまうことを予想しているからである。一方、ハラリ氏は、未来は全く不明であると述べている。人類絶滅の道もあるし、そうでない道もある。

有機的な物質からできているホモサピエンスが営々と築き上げてきたすべてのものが、何の価値もなくなるゼロ点がやってくるのだろうか。人間の幸福とは? どうもネガテイブ思考になってしまった。危険である。希望をもたなければ。

論文受理される(3月25日)

  • 松嶋範男
  • 2018/03/25 (Sun) 21:00:54
ついに、The protein Journalの編集長から論文がacceptされたとのメールがとどいた。先週の月曜日に、修正箇所をすべて赤い色で示した修正論文(図、表も一緒に)を3人の審査員のコメントに一つずつ説明した手紙をそえて投降した。この作業はすべてInternetを使って行われる。3人の審査員がコメントに我々が適切に答えているとのことでついに受理されたわけです。投稿料を支払って出版される運びになります。

ここ3週間は余りには、この論文を修正にするのに寝ても覚めてもといった状態で過ごした。審査結果を受けた1ヶ月前から、バトトカ君とエンヘさんは、審査員のコメントに応えるべく3種類の解析を新たにしてくれました。これらの結果をどう評価したらよいか、どのように審査員のコメントに応え、論文をどのように修正するか、考え続け、論文を修正しました。また、Kretsinger先生も修正論文を一字一句検討してくれました。内容は勿論、冠詞の使い方、単数と複数の区別、関係代名詞の使い方(特にthatとwhichの区別)、時制などなど。私の感度が鈍いので、これらの点をなかなか適切に使えない。以前は、しばしば論理の飛躍を指摘された。よく考えてみると、確かに論理の飛躍があることに気づき冷や汗をかいた。その点を鋭く指摘してくれたのである。論理的な不適さの指摘は最近なくなった。改善したのであろう。

一声、ヤッタゾと叫んだが、その後は強い喜びの感情が続かない。若いときはこみ上げる嬉しさに1週間はHappyであったのですが、不思議である。でも、このように現役時代と同じく頭脳を使い切る時間を過ごせることは、とても幸せと思っている。私の活力の源である。Kretsinger先生は81歳である。私もあと10年は研究者として現役でいたい。

この期間は疲れることも忘れていた。この反動が必ずやってくるので、明日からゆっくりした時間を過ごそう。リフレッシュしたら次の論文に取りかかります。

おめでとうございます

  • ROSINANTE
  • 2018/03/25 (Sun) 21:13:09
博士、ついに完成ですね。あなたの粘り強さには感服します。
決して「投降」などではなく、立派な「投稿」でした。
あと10年頑張るとは、とてもじゃないがついていけません。
せいぜい応援団として、感謝と尊敬の念をもって見守っていきます。これがあたしにできるせめてもの友情だと思ってください。
今度は、ずーっと若い人を育てるのだとか。期待しています。
あなたの力の源泉がどこにあるのかは分かりませんが、
尽きない探求心があなたを突き動かしているのでしょうね。
再会を楽しみにしています。

「サピエンス全史」を推薦したい

  • 松嶋範男
  • 2018/03/14 (Wed) 23:43:39
ユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福」(上、下)は、ジャレド・ダイアモンド著「 銃・病原菌・鉄-1万3000年にわたる人類史の謎」(上、下)とともに話題沸騰の書物である。両書物とも100万部をこえるベストセラーである。とても刺激的で、これまでの常識や固定観念を揺さぶられる名著である。「サピエンス全史」(上)を読了したところである。人類の歴史に興味がある私にとって必須の書物となった。是非とも推薦したい書物である。